1967年の刻印は左4本右3本の縦線です(左写真 。スリムも同様)。1967年8月にはパテントが切れたため、1967年8月~12月の間に "PAT.2517191"のない刻印が登場します(左下写真)。ただ1967年製に占めるこの刻印の割合は非常に少なく(1割程度)、並行して1月~7月期の在庫が相当用いられたと推測されます(8月にスムーズに移行されたならば4割程度必要)。したがってパテントのある刻印を前期(1月~7月)、ない刻印を後期(8月~12月)と考えるよりも、パテントのある刻印は通年(1月~12月)で、ない刻印 は8月~12月期に一部製造と考えるのが妥当です。
スリムは元々ボトムマーク(底面刻印)に"PAT.2517191"が ありませんが、この年の途中に従来のフラットボトム(平らな底面)からから現在と同様のキャンドボトム(窪みのある底面)に変更されます。 キャンドボトムの左の縦4本線は当初はフラットボトムと同様下にありましたが(これを中期とします)、すぐに上に変更されます(これを後期とします)。この後期の途中で"PAT.2517191"のないインサートが登場するため、これらの変更は8月までに行われていたと推測できます。
インサートは1~7月期は1タイプ(A)で(刻印文字大小差につき1963の解説参照)、8月~12月期は"PAT.2517191"をはずしたタイプ(B)と新しい刻印のタイプ(C)の2タイプが存在しますが、外ケース、インサートともパテントのある在庫が併用されているため混在しています(外ケースとインサートのパテントの有無は必ずしも一致しません)。スリムはパテントあり(a)、パテントなし(b) それぞれ1タイプずつです。
1967年後期には、もう一つ面白い刻印があります。左の刻印は1966年と同じ左右4本の縦線ながら"PAT.2517191" がありません。これは1966年に製造されたケースの刻印からメッキ前に"PAT.2517191"を打ち消したか、 あるいはこのような誤植の型を使用したものと思われ、出荷は1967年8月以降であると考えられます。これまで何万個ものビンテージ・ジッポーを扱ってきましたが、まだ10個程度しか入手できていない希少な刻印です。
1966-67年のインサートには「赤フェルト」と呼ばれる赤いオイル止めが用いられている場合があります(写真左)。 特に1967年は1割程度は赤フェルトですので「希少」とまで言うことはできませんが、興味深いアイテムです。
© 2004 Max Cady