マッドメンとはNYマディソンの広告マンのことであるが、ドラマの舞台は1960年代、主役は広告代理店に勤める敏腕コピーライター、ドン・ドレイパー(ジョン・ハム)である。彼はハンサムで仕事ができ、美しい妻とかわいい二人の子どもを持つ成功者であるが、家庭以外の私生活や過去に種々の問題をかかえており、1960年代という過渡期の流れに沿って物語は進行していく。左はマッドメンのプロモーション・ジッポー(2008年製)。
マッドメンでは、これでもかというぐらい喫煙シーンがある。仕事中の飲酒もさることながら、妊婦まで普通にタバコを吸っているのには驚かされる。ドンは真鍮製のジッポーを愛用。現実の1960年代にはソリッド・ブラスのジッポーは販売されていないが、極稀に未メッキの工場流出品などがあり、存在しないわけではない。
第1話は「ラッキー・ストライク」がクライアントである。ドンもラッキー・ストライクを愛煙するが、当時すでに健康問題が指摘されており、タバコ広告も困難に直面していた。名案が浮かばずに悩んでいたドンだが、土壇場で"IT'S
TOASTED"(天日干しではなくトーストしている)というコピーを思い出し、医学的根拠がないが健康不安を取り除くという妙案で切り抜ける(右は"IT'S
TOASTED"が入ったラッキー・ストライクzippo、1989年製)。
さて、1960年代はイラストから写真へ、ラジオからテレビへと広告が変遷していく時代である。ジッポー社の雑誌広告も1950年代の華やかなカラーのイラストから1960年代は白黒の写真が中心となる(各年ページ末の解説を参照されたし)。
マッドメン・シーズン3では、合併した英広告代理店からの出向者に用意された部屋にジッポーのカラー広告が飾ってある(アリの巣のオブジェの左)。1960年に発売されたコリンシアンとモダーンというテーブル・ライターの広告だ(左は1960年代の類似の広告)。第7話ではドンが当時のオイル缶でジッポーに注油するシーンまである(右は1963-67年製のオイル缶)。秀逸なストーリー展開もさることながら、こういう小道具類にも十分な配慮がされており、見ているものを飽きさせない。
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